浮田歯科医院
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人生100年時代 ― 50代からの歯科医療

2026年2月19日

第3回:50代のセルフケア再設計

――「磨いている」から「落とせている」へ――

50代は、人生の中でもとても大切な時期です。

 仕事や子育てが一段落し、自分自身の健康と向き合う余裕が生まれてくる一方で、体のあちこちに「これまでの積み重ね」が静かに現れ始める年代でもあります。

お口の中も例外ではありません。

 歯が急に悪くなるわけではないけれど、「若い頃と同じケアをしているのに、なぜか調子が悪い」「歯ぐきが下がってきた気がする」-そんな変化を感じ始める方が増えてきます。

実はこの50代こそが、セルフケアを“再設計”する最適なタイミングなのです。

50代は「まだ」セルフケアが十分にできる年代

歯科医療の現場にいると、年齢による大きな違いを実感します。

 70代後半以降になると、視力や手指の巧緻性(細かい動き)が少しずつ低下し、どんなに意識が高い方でも、以前と同じようにプラーク(歯垢)を落とすことが難しくなってきます。

それまでPCR(プラークコントロールレコード)15%前後を維持できていた方でも、

 という状態が起こりやすくなり、結果として短い間隔でのメンテナンス来院が必要になります。

一方、50代は違います。

 正しい知識と方法を身につければ、ご自身の力で高いレベルのセルフケアを維持できる最後の世代とも言えるのです。

50代のお口に起こっている変化とは

50代になると、多くの方に共通して見られる変化があります。

それが、歯周病の進行に伴う歯槽骨の吸収です。

重度でなくても、長年の歯周病によって歯ぐきが少しずつ下がり、歯と歯の間に**歯間鼓形空隙(ブラックトライアングル)**が生じてきます。

ここで大切なのは、

 「今まで通り歯ブラシだけでは、もう十分ではない」という事実です。

歯の表面は磨けていても、 歯と歯の間に残ったプラークが、歯周病の進行や虫歯の再発の原因になってしまいます。

目標はPCR15% ― 現実的で、意味のある数値

当院では、セルフケアの一つの目標として**PCR15%**を意識しています。

これは、

 非常にバランスの良い目標です。

大切なのは「頑張って磨いているか」ではなく、「プラークが実際に落ちているのか」。

せっかく時間をかけて磨くなら、成果が出る方法を身につけたいものです。

歯間清掃は“場所別”に考える

50代以降のセルフケアで、最も重要なのが歯間清掃です。

基本的な考え方はとてもシンプルです。

前歯(特に上下の前歯)→ フロスがおすすめ
歯と歯の接触が強く、歯間ブラシが入りにくいため、フロスで歯面に沿わせて清掃します。

奥歯→ 歯間ブラシがおすすめ
歯間空隙が広くなりやすく、プラークが溜まりやすい部位です。サイズ選びが重要になります。

「全部フロス」「全部歯間ブラシ」ではなく、部位に合わせて使い分けることが、PCR15%への近道です。

歯ブラシだけで歯間がきれいになる人もいる?

最近は、V7などの特殊な形状の歯ブラシを使った「つまようじ磨き法」で、歯間部まできれいに清掃できる方もいらっしゃいます。

これは、

 が合っている場合に限られます。

「歯ブラシだけで十分な人」も確かにいますが、それは歯科医院で確認して初めて分かることです。

自己判断で歯間清掃を省くのではなく、「自分には何が合っているのか」を知ることが大切です。

50代は“未来の自分への投資期間”

70代後半になってから、

 「もっと早くちゃんと磨き方を覚えておけばよかった」

 そうおっしゃる患者さんは少なくありません。

50代は、

 最後のゴールデンタイムです。

今ここで、 プラークが落ちるセルフケアを身につけておくことで、 将来の歯周病の進行や虫歯の再発を、最小限に抑えることができます。

「磨き方」は自己流で完成しない

セルフケアは、努力だけでは完成しません。

 正しい方向性と、専門家のチェックがあって初めて意味を持ちます。

当院では、

 を通して、50代からのセルフケア再設計をお手伝いしています。

次回予告

次回は、「50代からのメンテナンス間隔の考え方」についてお話しする予定です。

「どのくらいの頻度で通えばいいの?」
「ずっと同じ間隔でいいの?」

 そんな疑問に、分かりやすくお答えします。

臨済宗東福寺派 興昌寺の座禅会に参加して

冬の朝、静寂の中でただ呼吸に向き合う時間。

涅槃会の日に坐った座禅は、いのちの尊さと「いま」を生きる意味を、あらためて教えてくれました。

退職された英子先生と過ごした、心満ちた一日の記録です。

昨日2月15日は、仏教においてお釈迦さまが入滅された日、「涅槃会(ねはんえ)」でした。

私の実家の菩提寺である臨済宗東福寺派の禅寺、興昌寺(観音寺)の座禅会に、10月末に退職された英子先生と参加してきました。

英子先生は真言宗ですので宗派は違いますが、興昌寺では宗派を問わず、どなたでも温かく迎えてくださいます。昨日も、いつもの常連の方々に加えて、どこかの会社の皆さまが10名ほど参加されていました。

初めて来られる方は、開始15分前に到着し、座禅の作法や姿勢、呼吸の整え方などを丁寧に教えていただきます。いきなり本番ではなく、安心して坐れるようにとの細やかなご配慮です。

寒の底ともいえる冷え込みの朝。

静寂の中で足を組み、背筋を伸ばし、ただ呼吸に意識を向ける――

そのシンプルな行為が、いかに日常の雑念を洗い流してくれるかを、あらためて感じました。

英子先生のお母様は86歳。群馬の施設に入所しています。2年前に私も一緒に英子先生のお母様の施設を訪れ、義歯の修理と虫歯治療を手伝いました。歯科医として関わらせていただいた時間は、私にとっても忘れられないものです。

先月は危篤状態となり、肺に水がたまり入院したとのこと。

私の母も要介護5で、昨年から入退院を繰り返しています。

2月15日の涅槃会は、お釈迦さまの最期を偲び、いのちの尊さや無常をあらためて考える日です。呼吸に集中しながら、

「生まれてきたこと」
「いま生きていること」
「やがて終わりを迎えること」

に思いを巡らせました。

親の老いは決して他人事ではなく、命の流れの中に自分もいるのだと実感します。不安や寂しさは消えませんが、「いまこの瞬間を大切にする」という禅の教えが、静かに腹に落ちてきます。

座禅会のあとは墓参りへ。

冬枯れの景色の中に立つ墓石に手を合わせ、「今日も見守ってください」と心の中で語りかけました。

ご先祖さまから受け継いだ命のバトンが、私たちへ、そして子どもや孫へとつながっていく。その流れの中にいることをあらためて感じ、ご先祖様への感謝が自然と湧いてきました。

その後は、道の駅 たからだの里さいたへ。

英子先生は産直の店と温泉が大好き。冷たい空気の中でも、店内は地元の恵みであふれ、活気に満ちています。

昨日の戦利品は、

そして「津の輝(つのかがやき)」という銘柄のみかん。

まんばは香川の冬を代表する野菜。

息子の好物だったなと思いながら、「まんばのけんちゃん」を作りました。

春菊は胡麻和えに。

ブロッコリーはさっと茹でるだけ。

カリフラワーはピクルスに。

大根はずっしりと重く、みずみずしい。

寒さの中で育った野菜は、栄養も旨みもぎゅっと詰まっています。

「津の輝」初めてでしたが、帰宅後に一ついただきました。美味しそうな濃い橙色の皮に、酸味と甘みのバランスが絶妙で、寒い一日のご褒美のようでした。自然の恵みをいただきました。

隣接する**環の湯**で体を温め、湯上がりに日だまり食堂で英子先生とゆっくり語り合いました。

息子さんの結婚が決まったという嬉しい報告。

お母様の介護の現実。

そしてこれからの人生の過ごし方。

喜びと責任と不安が混じり合う世代だからこそ、こうして語り合える時間がありがたいのだと思います。

帰りには、「金刀比羅宮境内の高橋由一美術館」にも立ち寄りました。

芸術に触れる静かな時間もまた、心を整えてくれます。英子先生の住む神奈川県のなじみの風景を描いた作品も多く、自然と会話も弾みました。

寒い朝に坐り、

墓に手を合わせ、

冬野菜を買い、

温泉で温まり、

芸術に触れる 。

どれも特別なことではないのに、確かな充実感があります。

凍てつく朝の座禅は、心と体をまっすぐに整えてくれました。

そして、まんばや津の輝の甘さが、日常の幸せをそっと教えてくれました。寒い朝に坐り、墓に手を合わせ、冬野菜を買い、温泉で温まり、芸術に触れる 。一日を振り返ると、どれも特別なことではないのに、確かな充実感があります。

凍てつく朝の座禅は、心と体をまっすぐに整えてくれました。

そして、まんばや津の輝の甘さが、日常の幸せをそっと教えてくれました。

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