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2025年10月16日
先日、学生時代の友人と一緒に大阪万博に行ってきました。何年ぶりかに再会してのお出かけで、まるで学生時代に戻ったような気持ちになりました。
会場は人であふれ、人気パビリオンはどこも長蛇の列。それでも友人が折りたたみ椅子を持ってきてくれていたので、待ち時間も苦にならず、座っておしゃべりをしながら楽しく過ごすことができました。こういうちょっとした工夫があると、待ち時間がむしろ大切な思い出に変わるものですね。
友人と久しぶりに会って、改めて「おばちゃんあるあるだなぁ」と思ったのが飴の袋です。彼女はカバンの中から大きな袋を取り出して、まるで宝物を分け合うように「これ美味しいよ」と飴を配ってくれました。懐かしい味や珍しいフレーバーもあって、いただく側としてはとても嬉しかったのですが……歯科医の立場からすると少し心配もありました。というのも、彼女はおしゃべりをしながら次々に飴を口にしていたからです。
もちろん、楽しい時間にお菓子を食べること自体は悪いことではありません。しかし「少しずつ、何度も」という食べ方は、虫歯リスクをぐっと高めてしまうのです。
虫歯の発生メカニズムを少しご紹介しましょう。私たちの口の中には常にたくさんの細菌が存在しています。その中でも「ミュータンス菌」と呼ばれる虫歯の原因菌は、糖分をエサにして酸を作り出します。この酸が歯の表面(エナメル質)を溶かしていく現象が「脱灰」です。
ふだんは唾液が酸を中和し、歯の表面を修復する「再石灰化」が働いています。唾液は口の中を中性に保とうとする力(緩衝能)を持っているのです。しかし、飴やチョコなどの甘いものを口にするたびに酸が作られ、pHは急激に酸性に傾きます。そして、また中性に戻るまで時間がかかります。もしその途中で次の飴を食べてしまうと、歯はずっと酸性環境にさらされることになり、再石灰化が追いつかなくなるのです。
下の図は、甘いものを食べたときの口腔内pHの変化を模式的に表したものです。
赤い点線は「臨界pH」と呼ばれる5.5で、ここを下回ると歯の脱灰が始まります。
ご覧の通り、間食のたびにpHが下がり、少しずつ回復していきますが、頻繁に食べてしまうとグラフは下がりっぱなし。これが虫歯を作りやすい環境です。
意外に思われるかもしれませんが、虫歯のリスクという点だけで考えると、「少しずつダラダラ食べ続ける」よりも「一度にまとめて食べる」方が安全なのです。一度に食べれば、唾液の力で中性に戻る時間が確保されるため、脱灰と再石灰化のバランスが保ちやすくなります。
もちろん、甘いものを全く食べない方がいいというわけではありません。大切なのは「回数を減らすこと」と「食べたらケアすること」です。
では、虫歯予防のためにどのような工夫ができるでしょうか?
ダラダラと食べるのではなく、甘いものを食べるなら「おやつの時間」と決めて、そこで楽しむようにしましょう。
簡単なことですが、口の中の糖分を洗い流すだけでもリスクは下がります。特に緑茶やウーロン茶には抗菌作用もあります。
フッ素は再石灰化を助ける働きがあるため、虫歯予防には欠かせません。1日2回〜3回、丁寧なブラッシングを習慣にしましょう。
虫歯は初期段階なら削らずに経過観察できる場合もあります。定期検診でチェックすることが何より大切です。
今回の大阪万博は、友人と再会して大いに楽しむことができました。折りたたみ椅子のおかげで快適に待てたことや、飴を分け合っておしゃべりした時間はかけがえのない思い出です。
同時に「飴をちょこちょこ食べることのリスク」を改めて実感する機会にもなりました。
楽しい時間と健康はどちらも大切。ちょっとした意識と工夫で、甘い時間を安心して楽しめるようになります。皆さんもぜひ、日常の中で「食べ方」と「口のケア」を意識してみてくださいね。
浮田歯科医院では、虫歯や歯周病の予防に力を入れています。
「最近甘いものをよく食べているけど大丈夫かな?」
「検診をしばらく受けていないけど心配…」
そんな時はお気軽にご相談ください。
定期的な検診とプロのケアで、お口の健康を守り、安心して楽しい毎日を過ごせるようサポートいたします。