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2026年9月17日
2026年6月から、保険診療に新しく「CAD/CAMブリッジ」が導入されました。
これまで奥歯のブリッジを保険診療で製作する場合、金属を使用した、いわゆる「銀歯のブリッジ」が一般的でした。
今回、一定の条件を満たす場合には、金属を使用しない白いCAD/CAMブリッジを保険診療で選択できるようになりました。
「銀歯はできれば入れたくないけれど、自費診療の白いブリッジは費用的に難しい」という患者さんにとって、選択肢が増えたことは大きなメリットだと思います。
一方で、「保険で白いブリッジができるようになったのなら、それが一番よいのでは?」というほど単純ではありません。
ブリッジは毎日の食事で大きな力を受けるものです。見た目だけでなく、材料の強度、咬み合わせ、歯ぎしりや食いしばり、支台となる歯の高さ、そして歯をどのくらい削る必要があるかまで考えて選択することが大切です。
今回は、新しく保険適用となったCAD/CAMブリッジについて、当院でどのように考えているかをご説明します。
ブリッジとは、歯を1本失った場合などに、その両隣の歯を支台として、橋を架けるように人工の歯を入れる治療方法です。
CAD/CAMとは、コンピューターを利用して補綴物を設計・製作する技術です。
今回保険適用となったCAD/CAMブリッジは、第二小臼歯または第一大臼歯の1歯中間欠損を補う3歯ブリッジなど、定められた条件を満たす場合に使用できます。
どのような欠損にも使用できるわけではなく、適用できるかどうかは、お口の中や咬み合わせの状態を診査したうえで判断する必要があります。
CAD/CAMブリッジの大きなメリットは、金属色が見えないことです。
小臼歯から第一大臼歯付近は、笑ったり大きく口を開けたりした際に意外によく見えます。
そのため、これまで銀歯の見た目が気になっていた患者さんにとって、保険診療で白いブリッジを選択できるようになったことは、とてもよい制度改正だと思います。
ただし、歯科材料にはそれぞれ長所と短所があります。
「白い」という一つのメリットだけで材料を決めるのではなく、その歯で長期間しっかり咬めるかどうかまで考えることが重要です。
患者さんにはあまり知られていませんが、被せ物やブリッジの材料によって、必要となる厚みが違います。
当院で治療を考える際のおおよその目安では、
程度の厚みを確保する必要があります。
もちろん、実際に必要な切削量は使用する材料や製品、部位、咬み合わせ、設計などによって異なりますが、一般に金属は薄くても強度を確保しやすいという大きな特徴があります。
一方、CAD/CAM材料では強度を確保するために一定の厚みが必要となるため、メタルより多く歯を削らなければならない場合があります。
これは、ブリッジの材料を選択するときに私たちが重視しているポイントの一つです。
特に問題になるのが、もともと歯冠長、つまり歯ぐきから上に出ている歯の高さが短い患者さんです。
CAD/CAMブリッジの厚みを確保するために約2mmのスペースを作ろうとすると、支台歯として必要な高さを十分に残せない場合があります。
ブリッジは削った歯に被せて接着し、両側の支台歯で全体を支えています。そのため、支台歯の高さが不足すると、ブリッジを保持するための維持力が十分に得られなくなる可能性があります。
「白いブリッジにするために歯をたくさん削った結果、支台歯として不利な形になってしまう」のであれば、本末転倒です。
そのような場合には、少ない切削量でも強度を確保しやすいメタルブリッジのほうが適していることがあります。
CAD/CAM冠やCAD/CAMブリッジに使用される材料は、レジンと無機質フィラーを組み合わせた材料です。
金属やジルコニアとは材料の性質が異なり、レジンを含む材料は、唾液などの水分に長期間さらされることで吸水し、材料特性が経年的に変化する可能性があります。また、材料そのものだけでなく、歯と補綴物をつなぐ接着界面も、長期間にわたり水分や咬合力の影響を受けます。
当院でもこの数年間、多くのCAD/CAM冠を使用してきました。
その中で、装着後3年前後を経過したCAD/CAM冠に、脱離したり割れたりするケースを経験するようになりました。
もちろん、すべてのCAD/CAM冠が3年程度で問題を起こすわけではありません。長期間問題なく使用されている患者さんもたくさんいらっしゃいます。
また、脱離や破折の原因を材料の経年変化だけに求めることもできません。
支台歯の高さや形成形態、接着時の条件、咬み合わせ、歯ぎしりや食いしばりなど、さまざまな要因が関係します。
しかし、このようなCAD/CAM冠での臨床経験があるからこそ、さらに大きな力を受けるブリッジにCAD/CAM材料を使用する場合には、より慎重に適応を判断したいと考えています。
特に、
では、破折や脱離などのリスクを考慮する必要があります。
ブリッジは単独の被せ物とは異なり、歯のない部分に加わる力まで両側の支台歯で負担します。
そのため、歯ぎしりや食いしばりが強い患者さんで保険診療をご希望の場合には、従来のメタルブリッジをおすすめすることがあります。
「白い歯が保険でできるのに、なぜ銀歯をすすめるの?」と思われるかもしれません。
しかし、メタルには薄くても強度を確保しやすく、歯を削る量を抑えられるという優れた特徴があります。
見た目だけではなく、長期的に安定して使用できることを優先すれば、メタルのほうが適している患者さんもいらっしゃいます。
「銀歯にはしたくない。でも咬合力が強いので強度も重視したい」という患者さんには、自費診療になりますがジルコニアブリッジをご提案することがあります。
ジルコニアは高い強度を持つセラミック材料で、金属を使用せず白いブリッジを製作できます。
ただし、ジルコニアであれば絶対に壊れないという意味ではありません。
非常に強い歯ぎしりや食いしばりがある場合には、補綴物だけではなく、支台となる歯や歯根、歯周組織への負担も考える必要があります。必要に応じて咬み合わせを調整したり、就寝時にナイトガードを使用していただいたりすることも大切です。
もう一つ知っておいていただきたいのが、クラウン・ブリッジ維持管理料、いわゆる「補綴物維持管理」の制度です。
CAD/CAMブリッジもこの制度の対象となります。
対象となるブリッジを装着した後は、装着した医療機関が一定期間責任を持って維持管理する制度で、特に重要なのが装着後2年間の取り扱いです。
クラウン・ブリッジ維持管理料を算定した補綴物については、原則として2年間、同じ医療機関で同じ部位の補綴物を通常どおり保険診療で新しく作り直すことには制限があります。
「保険で白くできるので、とりあえずCAD/CAMブリッジにして、もし壊れたらまた作ればいい」という考え方で選択するものではありません。
だからこそ、最初の材料選択が重要になります。
今回、CAD/CAMブリッジが保険診療に導入されたことは、患者さんの選択肢が増えるという意味で、とてもよい変化だと思います。
当院でも適応をしっかり見極めながら活用していきたいと考えています。
しかし、私たちが治療方法を選択するときに大切にしているのは、「新しい材料だから」「保険で白くできるから」ということだけではありません。
咬合力、歯ぎしりや食いしばり、支台歯の高さ、必要な切削量、残っている歯や歯周組織の状態などを総合的に考えます。
条件が適していて保険で白くしたい方にはCAD/CAMブリッジ。
歯冠長が短い方や咬合力が強く、歯を削る量もできるだけ抑えたい場合には保険のメタルブリッジ。
白さと強度の両方を重視される場合には、自費診療のジルコニアブリッジ。
それぞれに長所と短所があります。
歯科材料やデジタル技術はこれからも進歩していくでしょう。
当院でも新しい技術を積極的に取り入れながら、「新しいものだから使う」のではなく、その患者さん、その歯にとって何が一番適しているのかを考えた治療を、これからも大切にしていきたいと思っています。
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