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2026年9月10日
私は1999年の開業以来、25年以上にわたりストローマンインプラントによる治療を行ってきました。
これまで数多くの症例を経験してきましたが、先日、私にとって初めて経験する出来事がありました。
それは、骨とインプラントがしっかり結合したことを確認した後(オッセオインテグレーション獲得後)に、インプラントを失った症例です。
長年インプラント治療に携わってきましたが、この症例は改めて「インプラント治療は手術が成功すれば終わりではない」ことを教えてくれました。
インプラント治療では、人工歯根を顎の骨に埋め込み、その後数か月かけて骨としっかり結合するのを待ちます。
この状態をオッセオインテグレーションと呼びます。
現在では「オステル(Osstell)」という測定器によってインプラントの安定性を数値で確認できるようになり、安全に治療を進められる時代になりました。
今回の患者さんも、オステルで十分な安定性を確認したうえで上部の歯を装着しました。
しかし、その後インプラントを失う結果となりました。
患者さんのお口の中を確認すると、原因はある程度推測できました。
下顎のジルコニア冠には、対合する上顎のチタン冠が擦れてできた金属色が付着し、チタン冠には明らかな圧痕がありました。
つまり、通常では考えられないほど強い咬合力が夜間に繰り返しかかっていたと考えられたのです。
インプラントには天然歯のような歯根膜がありません。
天然歯はわずかに沈み込むことで衝撃を吸収できますが、インプラントにはそれがありません。
そのため私は、インプラントの咬合は天然歯よりわずかに弱く当たるよう、慎重に調整しています。
それでも、今回の患者さんの咬合力は、その想定を上回っていたのでしょう。
この患者さんはソケットリフトを併用した症例でしたが、隣在歯は生活歯で歯周組織も安定していました。
さらに、定期的なメンテナンスを受け、インプラント周囲炎を起こさないよう口腔ケアも継続していました。
つまり、今回の問題は感染ではありませんでした。
原因は、過大な咬合力だったと考えています。
当院では術前の説明の際、
「夜間の食いしばりが強い方は、インプラントを守るためにナイトガードを使用してください」
と必ずお伝えし、承諾書にも記載しています。
しかし今回は、継続して使用されていなかったようでした。
患者さんご自身は「寝ている間のこと」なので、自覚がありません。
だからこそ、歯科医師が繰り返しその重要性をお伝えする必要があると改めて感じました。
振り返ってみると、これまでロストした症例はいずれもオッセオインテグレーションを獲得する前でした。
いずれも強いブラキシズムがありましたが、再手術ではストローマンのTLXやBLXを用いることで高い初期固定を得ることができ、現在は問題なく経過しています。
つまり、
初期固定の問題と、
骨結合後の長期的な咬合力の問題は、
まったく別の課題なのだと今回改めて実感しました。
もう一つ考えさせられたことがあります。
私は以前、インプラントセメントによる仮着を行っていました。
現在はセメント残留によるインプラント周囲炎を防ぐため、スクリューリテインを採用しています。
この変更自体は現在の考え方として正しい選択だと思っています。
しかし今回、
「以前のように仮着であれば、補綴物が外れて力を逃がし、インプラントを守れた可能性もあったのではないか」
という思いも浮かびました。
もちろん、これは一症例から導き出せる結論ではありません。
それでも、臨床家として考え続ける価値のあるテーマだと思っています。
25年間インプラント治療を続けてきても、新しい学びがあります。
今回の症例は私に、
「インプラント最大の敵は細菌だけではない。患者さんご自身も気づいていない夜間の咬合力である」
ということを改めて教えてくれました。
インプラント治療は、手術だけで完結するものではありません。
適切な咬合、定期的なメンテナンス、そしてナイトガードの継続使用。
そのすべてがそろって初めて、インプラントは長く患者さんのお口の中で機能し続けます。
今回の経験を今後の診療に生かし、一人でも多くの患者さんのインプラントを長く守っていきたいと思っています。
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